生産者並びに農業生産法人(事業創始者)たちは、自分の得意な生産現場から離れて、加工製造(2次産業)、流通・販売(3次産業)のあまり慣れていないセクションも同時に考えていかなければならない。さらには、事業全体がスムーズに進むための経営を司っていくことが課せられている。自分の強みと弱みをしっかりと把握した上で、足りない部分は別な人材に任せていく必要がある。その事業を進めていく過程で人の雇用が産まれる。経営者の立場である生産者は使用者となり、雇用された人材は労働者となる。今まで個人もしくは家族経営で成り立っていた生産者が、経営する事業者として人材(労働者)を育成していく立場になることを忘れてはいけない。
事業計画を立案していく段階から、事業者たちには人材育成のための“生涯教育”について学ぶ必要がある。生涯教育とは、個人、集団、社会の向上のために、生涯を通じて人間的、社会的、職業(専門分野等)的な発達を図り、人間が絶えず成長していくことである。その成長過程のすべてにわたって事業者はそれを援助し、事業の発展と個人の成長を持続可能なものにしていく責務がある。

一方、現場で働く労働者である生産者には、事業者側が考えるマインドとは違うアプローチが必要である。労働者としての立場から見えている日々の課題や日常の出来事は、経営者には伝わってないことが多い。その些細に思えることが実は重要な問題を抱えていることがある。逆にその問題の改善によって劇的に事業が進むケースがある。よって、経営者側は直接見聞きできることだけを受け入れるのではなく、外部からの支援を仰いで小さな声を拾っていくことが求められている。コンサルティングを行う支援者達である6次産業化のプランナーまた専門技術者は、経営者を外した個別又はセクションごとのヒヤリングを行い、隠れた事業課題や気づきを見つけることが求められている。
また、経営者と労働者の間にいるリーダーや中間管理職の方達にもまた違う視点の悩みや気づきがあるので、別途機会を設けてコミュニケーションをとるように心がける必要がある。経営者には、各々から聞いた内容についてそのまま伝えるのではなく整理して伝え、双方のコミュニケーションに亀裂が起こさぬよう十分気をつける必要がある。実際、6次産業化の現場では、幾度となく様々な悩みやうまくまとまらないことを見てきたので信頼できる外部の専門家に委ねてみるのもいい。